しかし、今年は昨年までと比べるとやや穏やかな暑さなので、真夏に向けての注意点を書くタイミングを逃してしまいました。

それでも、先週(16~22日)熱中症で搬送された方は、全国で5467人にも上り、そのうち死亡者は13人とのことで、梅雨明け後に注意が必要なことは変わりありません。
どうして梅雨明け後が危ないのかというと、まるでスイッチが切り替わったかのような突然の暑さに、身体の調整が間に合わず、体調を崩す方が続出するからです。
逆に、お盆が近づく頃になれば身体が毎日の暑さに慣れるため、体調を崩す方は減ります。
今の時期に当院に駆け込んで来る方の特徴としては、体全体の筋肉があり得ないほどにカッチカチに固まっており、足や背中は何だかウェットスーツを着ているかのように硬~くパンパンに浮腫んでいます。
多分、身体が脱水症の手前くらいまで水分不足になった結果、このような身体の状態を引き起こすのではないかと思われます。
そこで、この時期にはのどが乾いていなくても、意識的に十分に水分を摂る必要がありますが、飲み物にも注意が必要です。
糖分(特に砂糖)の多い飲み物を大量に飲んでしまうと、『ペットボトル症候群』とか『急性糖尿病』と呼ばれる症状が起きることがあります。
清涼飲料水などの水に溶けている糖分は身体への吸収が早いため、がぶ飲みすると急激に血糖値が上がります。血糖値が上昇するとかえってのどが渇くため、さらに飲むという悪循環に陥りやすいのです。
そして、急激に血糖値が上がると、血糖値を下げようとして大量にインスリンが出ますが、必要以上のインスリンによって今度は急激に血糖値が下がって、何と元の血糖値よりも下がってしまいます。
つまり、糖分を摂ったのにかえって低血糖症の状態になってしまうのです。これを、機能性低血糖症と呼ばれています。

低血糖症の症状としては、極度のだるさ、強い疲労感、極度の眠気、気を失いそうになる、めまい、ふらつき、手足の震え、目のかすみ、まぶしく感じる、頭痛、集中できない、などがありますが、更に悪化すると、イライラ、神経過敏、不安感、恐怖感、精神的不安定、うつ症状、パニック発作、などにまで発展することがあります。

恐ろしいですね。
機能性低血糖症は、甘い飲み物だけでなく、毎日のように空腹時にお菓子類を食べている方にも多々起こります。上記の症状に心当たりのある方は注意が必要です。
さて、清涼飲料水ほど甘くなければいいのかというと、そうとも言えません。
病院で、「暑い時には何を飲んだらいいですか?」と聞くと、大抵「ポカリスェットがいいですよ」と勧められます。
ところが、ポカリスェットなどのスポーツドリンクにも、かなりの糖分(砂糖)が入っているのです。

更に、砂糖の摂り過ぎは、低血糖症以外にも問題が起こります。
当院に通われている方はよくご存知の通り、砂糖を摂り過ぎると、筋肉がカチカチに固くなってしまいます。
昨年の夏にも、ぎっくり腰でいらした方が、どうしようもない位に筋肉がカチカチに固まってしまって緩めることができない状態になっていましたが、その方は、農作業で大量に汗をかくため、1日に2リットルくらいのポカリスェットを飲んでいたということでした。
砂糖の摂り過ぎで筋肉が固まる場合には、運動で筋肉痛になる時とは違って、全身が均等に固まるため、自分では固まっていることに気づきません。
その状態で、農作業などのように身体を使う仕事を行うと、突然ぎっくり腰になってしまうことも珍しくありません。

更に更に、甘くなくても、冷たい飲み物にも注意が必要です。
冷たく冷やした飲み物などを頻繁に摂ると、内蔵が急激に冷やされてしまうため、内臓の働きが悪くなります。
特に、肝臓の働きが悪くなると、異様な疲れやだるさといった症状が現れます。

これも、経験のある方はいるのではないでしょうか。
更に更に更に、お茶や紅茶やコーヒーなどは、飲み過ぎるとカフェインの取り過ぎになるため、イライラしたり、攻撃的になったりするだけでなく、「飲まずにいられない」といった禁断症状が起きることもあります。禁断症状が起きると、精神的に不安定になります。

お茶の類ならば、麦茶であればカフェインは入っていないので安全です。
暑い時には十分な水分補給が必要ですが、上記のことを踏まえて、冷たくない常温のお水か麦茶を飲むのが無難ですね。
