そんな中、毎年今の時期になると「職場の環境が変わったら体調を崩した」という方が何名かいらっしゃいます。

今回は、これまで相談があったケースを紹介したいと思います。
◆ケース1:椅子が合わない
酷い場合には「椅子が壊れている」という方も時々いますが、
・背もたれの無い椅子といったお声はよく聞きます。
・背もたれがリクライニングしてしまって固定できない
・肘掛けが邪魔で椅子を引けない(机の下に入らない)
・自分には大きすぎる(小柄な女性に多い)
ほんの短時間なら問題ありませんが、座り仕事の方であれば、椅子は姿勢を左右する重要なアイテムですから、椅子の良し悪しによって肩こりや腰痛も起こります。
背もたれの無い椅子や背もたれが固定できない椅子では、常に筋肉に力を入れていないと姿勢を保つことができませんから、結局姿勢が悪くなり、肩こりや腰痛が悪化します。
肘掛けが邪魔で椅子が引けないと、キーボードやマウスの位置が遠くなるため、背中が丸まってしまって、やはり肩こりや腰痛が悪化します。
自分には大きすぎる椅子という方はかわいそうですね。
深く座ったら足が届かないし机から遠くなってしまい、浅く座ったら背もたれの無い椅子と同じことになってしまいます。
これ以外にも、「公園のベンチみたいな椅子」とか「パイプ椅子のように腰の部分が空洞の椅子」など、長時間座るのに適さない椅子という方もいました。
人間の身体は20分以上じっとしているとその姿勢を覚えてしまう(矯正されてしまう)ようにできていますから、座り仕事の方にとって、椅子は健康を作用する重要なアイテムなのです。
企業の総務の方は、椅子は“社員の健康や業務効率を左右するもの”だと考えて、ある程度の経費をかけていただきたいと思います。
◆ケース2:西日が当たる、エアコンが当たる
このケースも、毎年数名はいらっしゃいます。
窓の開かない大きなビルのオフィスの場合、西日の当たる席は日を遮ることができません。
そんな席に座っていると、体感的には真夏のエアコン無しの部屋のようになりますが、そんな状態でパソコンに向かっていれば、頭がクラクラしてきて我慢していれば倒れてしまうでしょう。
エアコンの風が直接当たる席というのも大変です。
夏は冷気で凍えてしまい、冬は暑さと乾燥で、とても仕事どころではないでしょう。
こんな環境では仕事にならないことは誰でもわかることなのですが、相談のある患者さんの職場では「総務や上司に訴えても対処してもらえない」というケースがほとんどです。
結果、体調を崩して病院まわりが始まるわけですが、原因がこれでは治るわけがありません。
◆ケース3:パソコンが◯◯
まず、本来は周知の事実なのですが、ノートパソコンは長時間の仕事には向きません。
やってみればわかりますが、ノートパソコンに向かうとどうしても下を向かなければならず、グッと背中を丸めた猫背の姿勢になってしまうからです。
そんな姿勢で仕事をしていたら、短期間で酷い肩こりに悩まされることになるでしょう。
流石にノートパソコンではなくても、間違った環境として多いのは、『キーボードの位置が遠い』というケースです。
キーボードが遠いと腕を伸ばさなければなりませんが、腕を伸ばすと両肩が前に出てしまい、どうしても猫背になります。
簡単にキーボードを手前に持ってくることができればいいのですが、どうしても手前に書類を置く必要があったり、困ったケースではキーボードの位置が固定されていて動かせないという方もいました。
また、「共用パソコンなので、自分に合うように椅子やキーボードやモニターの位置などを変えるのが難しい」という方も多いです。
パソコン業務は、身体が姿勢を覚えてしまう20分を軽く超えるでしょうから、是非環境を整えてほしいです。
◆その他のケース
・トイレに行けない
「特別な服に着替えて業務を行うので、頻繁にトイレに行くわけにはいかない」とか、「トイレに行くには上司の許可が必要」などのことから、水を飲むのを控えてしまい、それで体調を崩してしまっているという方も毎年います。
・靴が原因
仕事で履く靴が職場で統一されていて、その靴が原因で痛みやしびれが起きたという方も時々います。
以前いらした方の場合には、パン屋さんなのに履く靴が決められていて、その靴が合わなくて体調を崩していました。パン屋さんで店員の靴を見るお客さんってほぼいないのではないかと思うのですが、どうなんでしょう。
この他、「担当することになった機械や作業が確実に腰を痛めるもの」という方もいらして、中には背骨や腰の骨が完全にあり得ない形に曲がってしまっていた方もいました。

その方々の中には、上司に訴えても聞き入れてもらえずに、苦痛に耐えきれなくなって泣く泣く会社を辞めた方も複数いました。

色々書きましたが、職場の環境は、勤めている個人の意思では変えられないものなので、大切な身体が壊れてしまう前に、管理する側の人が重要な『業務』として環境を整えてくれることを願います。